遺言・遺留分等|FP2級Wiki

この項目はFP1級だと本来大ボリュームですが、それをぎゅーっとまとめて覚えるのがFP2級です。それぞれは概要のみで構わないのですが、範囲の広さは変わらないので結構手ごわいです。遺言と遺留分については特にしっかり覚えましょう。

       

1.遺言の効力

遺言とは、遺言者の死亡後の法律関係を定める最終意思の表示で、遺言者の死亡によりその法律効果が発生する。
遺言は相手方のない単独行為で、遺言を行った者を遺贈者、遺言により財産を取得する者を受遺者、遺言により財産を残すことを遺贈と言う。
遺贈は遺言によって一方的に意思表示できる単独行為であり、贈与者と受贈者との合意によって行われる死因贈与とは異なる。
遺言事項は民法で限定的に定められており、定められた事項以外について記載しても法律上は無効になる。

遺言には普通方式遺言と特別方式遺言があり、FP試験では普通方式遺言が出題される。普通方式遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あり、その中でも現実的に多用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言。自筆証書遺言については、財産目録については自筆でなくても良くなったり、法務局における遺言書の保管制度を利用すると検認が不要になったりと、自筆証書遺言の利便性が向上している。

Wiki技能士

ちなみに特別方式遺言ですが、緊急に死期が迫っているときや日常から隔離されている状況(船内や刑務所内など)の特別な状況で作る遺言書で、かなり特別な状況での遺言書となります。出題されたことはいままでないと思います。

遺言のポイント

  • 満15歳以上の意思能力を有する者であれば、だれでも遺言を作成できる
  • 遺言が複数ある場合、日付の新しいほうが有効となる
  • 遺留分を侵害する遺言も有効(有効だけど遺留分侵害請求できる)
  • 遺産すべてでなく一部の遺産だけの遺言も可能
  • 遺言の撤回は自由だが、原則遺言の方式による。ただし、先の遺言と同じ方式でなくてもよい
  • 遺言者が故意に遺言書(公正証書遺言以外)を破棄したときは破棄した部分は撤回したものとみなす
  • 未成年者、推定相続人、受遺者、配偶者、直系血族などは遺言の証人にはなれない
  • 遺言書の財産目録パソコン作成や通帳コピーでも認めるようになった(目録への署名押印必要)
  • 訂正する場合はその個所に署名押印しないと認められない
  • 遺言の受遺者には代襲のルールはありません
  • 遺言によって相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じることができる。
       

2.遺言の種類

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
全文の記入者本人
(代筆不可)
公証人
(本人から口授)
制限なし
(代筆やPCも可)
署名・押印本人本人・証人・公証人本人(封筒には本人、公証人、証人)
証人・立会人の要否不要証人2人以上公証人1人&証人2人以上
検認要※不要
長所秘密保持
手続きが簡便
公証役場で保管するので
内容が明確で確実性が高く
紛失や偽造、変造などの危険がない
秘密にしたまま公証人に
遺言を証明してもらえる
短所基本自筆なので書けないと困る
偽造とか変造される危険もある※
内容に不備があると困る
複数人が関わるため
秘密が漏れる危険
手続きが煩雑で費用もかかる
公証人は書面に不備がないかは
見てくれないので無効となる場合がある
※法務局の遺言書保管制度を使うと検認が不要になるし偽造の心配もない

検認

遺言者が亡くなり相続が発生した際、検認が必要な遺言書については保管者または相続人が家庭裁判所に提出し検認を受ける。検認は、法定の条件を満たしているかどうかを形式的に確認するものなので、その内容までは判断しない。

法務局における遺言書保管制度

2020年7月10日より施行された制度。遺言者自身が法務局に赴き、自筆証書遺言の保管申請をする。

利用するポイント

  • 申請時に保管官の外形的なチェックが受けられる(内容を保証するものではないので注意)
  • 遺言書は原本&画像データとで長期間適正に保管される
  • いざ相続が発生したときに検認が不要になる
  • 遺言書の閲覧の請求ができるのは遺言者本人のみ
       

3.遺留分

遺留分とは、相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産のこと。遺留分は一定の贈与や遺贈に優先される。決して侵害されない相続人の権利ともいえます。

1.遺留分権利者

相続人であり、配偶者、直系尊属、直系卑属(代襲含む)であること。(兄弟姉妹には権利がない)

2.遺留分の割合

相続人が直系尊属だけ(配偶者もいない)の場合は基礎財産合計の3分の1
それ以外の場合は2分の1が遺留分の総額となり、それを法定相続割合で分配するイメージです。
なお、遺留分を放棄した者がいる場合でも、ほかの遺留分権利者の遺留分割合は増加しない(相続の放棄とは違う)

3.遺留分の放棄

遺留分は放棄できる。生前に行う場合は家庭裁判所の許可が必要になる。死後の放棄の場合は許可不要

4.遺留分侵害額請求権

遺言や生前贈与で遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます。
遺留分侵害額請求権は意思表示するだけで良く、遺留分の侵害を知った時から1年以内、もしくは相続開始から10年以内に請求をしないと権利は消滅する。

5.遺留分に関する民法の特例(中小企業)

中小企業の事業承継時には、自社株などの財産が事業の後継者に集中するため遺留分を侵害してしまいがちです。そこで事業承継をスムーズに行うために、後継者が旧代表者から自社株式(非上場)の生前贈与を受け入れる際には、遺留分権利者の全員と合意し、経済産業大臣の確認をとり、さらに家庭裁判所の許可を得ることによって、2つの特例が使用できます。

除外合意

自社株式を遺留分算定基礎財産から除外できる

固定同意

自社株式の評価額を合意時の時価に固定できる。
(その後株価が上がっても相続時の遺留分に影響が出ないように)

       

4.成年後見制度

1.法定後見制度(後見・保佐・補助)

法定後見制度は心身に障害のある成年者が通常の生活を営むために援助を提供する制度。障害の程度に合わせて3種類(後見・保佐・補助)存在する。それぞれ本人の意思の尊重と心身の状態および生活の状況に配慮する義務を生ずる。
一定の申立権者である本人、4親等内の親族、検察官等、市町村長、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人からの審判の申立てにより、家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を選任する。これらは個人、法人や資格の有無を問わず、複数の者であっても良い。
成年後見人は、成年被後見人(当人)が自ら行った法律行為のうち、日常的な行為を除いて取り消すことができる権利を持つ。

2.任意後見制度

任意後見制度は、本人がまだ健常なうちに、あらかじめ任意後見人を契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

  • 契約は公正証書で行われる。
  • 効力が発生するのは、①本人の事理弁識能力が低下し、②任意後見人が家裁に対して任意後見監督人の選任を請求し、③家裁によって任意後見監督人が選任されたことが条件となる。
  • 複数の任意後見人や法人の任意後見人も認められる。

外部リンク:国税庁,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。2022年1月試験 学科 問56

民法上の遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 遺言は、未成年者であっても、満15歳以上の者で、かつ、遺言をする時にその能力があれば、法定代理人の同意を得ることなく単独ですることができる。
  2. 遺言者が自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成する場合、当該目録への署名および押印は不要である。
  3. 公正証書遺言を作成する際には、証人2人以上の立会いが必要とされる。
  4. 遺言者が法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、その自筆証書遺言について、相続開始後の家庭裁判所の検認手続きは不要である。

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解答

助手のウィキ子

財産目録はパソコンOKで便利になったんですが署名と押印は必要です。