法人の生命保険の税務|FP2級Wiki

損金算入は経費として利益を圧縮できます。益金算入は利益が増えます。利益を圧縮できれば、その分そこにかかる税金を少なくできる訳です。
複式簿記での出題が基本となります。筆者は大変苦手です。特殊な経理方法もあるので注意して学習しましょう。

       

1.法人契約の経理処理の概要

1.保険料の経理処理(法人が受取人※の場合)

  • 貯蓄性のない保険の保険料は損金算入(定期保険や特約)
  • 貯蓄性のある保険の保険料は資産計上(保険料積立金)
  • 前納保険料は資産計上、期間経過とともにあとから取り崩す形で経理する。

※保険金の受取人が法人ではない場合には保険料の支払のつど損金算入する。

2.保険金・給付金・解約返戻金の経理処理(法人が受取人※の場合)

  • 資産計上額がない場合は全額益金算入(雑収入)する
  • 資産計上額がある場合は、受取額資産計上額より多い場合は差額を益金算入。少ない場合は差額を損金算入する。

※保険金の受取人が法人ではない場合には保険金等について法人の経理処理は不要。資産計上額がある場合には、その額を取り崩して損金算入する必要がある。

       

2.定期保険の経理処理

被保険者(役員・従業員)、死亡受取人(法人)の契約形態なら保険料は定期保険料として損金算入
被保険者(役員・従業員)、死亡受取人(遺族)の契約形態なら保険料は福利厚生費として損金算入

特定の役員・従業員を被保険者とするなら(平等ではなくひいきしたら)給与になる場合がある。

仕訳の例

法人が定期保険料100万円を支払った場合。

借方(受)貸方(払)
定期保険料  100万円(損金計上)現金・預金  100万円

3.終身保険の経理処理

被保険者(役員・従業員)、死亡受取人(法人)の契約形態なら保険料は保険料積立金として資産計上
被保険者(役員・従業員)、死亡受取人(遺族)の契約形態なら保険料は給与となる。

仕訳の例

法人が終身保険料100万円を支払った場合

借方(受)貸方(払)
保険料積立金  100万円(資産計上)現金・預金  100万円

100万円払った保険を解約して90万円受け取った場合

借方(受)貸方(払)
現金・預金 90万円
雑損失   10万円
保険料積立金 100万円

100万払った保険の被保険者が死亡して、法人が死亡保険金500万円を受け取った場合

借方貸方
現金・預金  500万円保険料積立金  100万円
雑収入     400万円
       

4.養老保険の経理処理

福利厚生費として経費にさせるには普遍的加入が必要となるので注意。

被保険者(役員・従業員)、満期&死亡受取人(法人)の契約形態なら保険料は保険料積立金として資産計上
被保険者(役員・従業員)、満期(被保険者)、死亡受取人(遺族)の契約形態なら保険料は給与。
被保険者(役員・従業員)、満期(法人)、死亡受取人(遺族)の契約なら半分は資産計上(保険料積立金)、半分は損金算入(福利厚生費)

仕訳の例(福利厚生プラン)

年間保険料100万円払った場合

借方貸方
保険料積立金 50万円
福利厚生費  50万円
現金・預金 100万円

保険料100万円払込済みの契約を解約して法人が110万円受け取った場合

借方貸方
現金・預金  110万円保険料積立金  50万円
雑収入     60万円

100万円払った保険で、遺族に死亡保険金が支払われた場合の仕訳

借方貸方
雑損失 50万円保険料積立金 50万円
100万円の半分を経理する

5.個人年金保険の経理処理

被保険者(役員・従業員)、年金&死亡受取人(法人)の契約形態なら保険料は保険料積立金として資産計上
被保険者(役員・従業員)、年金(被保険者)、死亡受取人(遺族)の契約形態なら保険料は給与。
被保険者(役員・従業員)、年金(法人)、死亡受取人(遺族)の契約なら9/10は資産計上、1/10は損金算入

       

6.定期保険・第三分野保険の経理処理(2019.7.8以後契約)

解約返戻率の違いにより下記のとおり分類されます。

2019年7月8日以後契約の、返戻率の高い定期保険および第三分野保険の表

最高解約
返戻率
資産計上期間資産計上割合
(前払保険料)
取崩期間経理処理
50%以下なし(全額損金処理)なしなし
50%70%以下前半40%相当期間経過まで40%資産
60%損金
保険期間75%経過後から
保険期間終了まで均等に崩す
70%85%以下前半40%相当期間経過まで60%資産
40%損金
保険期間75%経過後から
保険期間終了まで均等に崩す
85%最高解約返戻率になる期間まで

もしくは

その時期を経過した後で、(その年の解約返戻額-前年の解約返戻額)÷年換算保険料額が70%を超えなくなるまで

※資産計上期間が5年未満となってしまう場合は5年とします。(保険期間が10年未満の保険なら5割経過後から)
10年目まで
最高解約返戻率×90%

11年目から
最高解約返戻率×70%

残りが損金
資産計上期間経過後は均等に取り崩して損金算入
※解約返戻率が高いポイントが複数ある場合はもっとも遅い時期からで考える

7.長期平準定期・逓増定期保険の経理処理(2019.7.7以前契約)

2019年に改正されたばかりですから、仕訳の問題としては古いほうが出題される可能性は充分考えられます。
この日までに加入している保険は現在でもこの経理処理ができます。
逓増定期保険は保険期間が長くなるにつれ保険金額が増額していく保険です。
保険金受取時は資産計上を取り崩して損金算入し、差額を雑収入として益金処理します。
保険終了時の年齢と契約年齢+保険期間×2が条件となってきます。

下記の表の逓増定期保険については2008年2月28日以後の契約に限ります。

保険終了時の年齢被保険者の契約時年齢+保険期間×2保険期間前半6割相当期間(1年未満の端数は切捨)
長期平準定期保険70歳超105超半分資産計上
半分損金算入
逓増定期保険①(②③除く)45歳超半分資産計上
半分損金算入
逓増定期保険②(③除く)70歳超95超3分の2資産計上
3分の1損金算入
逓増定期保険③80歳超120超4分の3資産計上
4分の1損金算入

残り4割相当期間は全額損金算入。前半6割相当期間の資産計上分も残り4割期間に均等に取り崩して損金算入できる。

       

8.配当金(積立方式)の経理処理

配当の通知を受け取った場合、益金算入(雑収入)し、資産計上(配当金積立金)する。積立配当金に対する利子も同様。
下記は、今年の配当金10万円と、今までの配当金から出た利息1万円、それらを合わせて積み立てるという通知が来た場合の例。

借方貸方
配当金積立金 11万円雑収入    11万円

保険金等とともに配当金を受け取った場合、資産計上額(配当金積立金)を取り崩す経理処理をする。
下記は、被保険者死亡で法人が死亡保険金1,000万円を受け取った場合で法人が計上している配当金積立金が10万円の場合。

借方貸方
現金・預金  1,010万円保険料積立金  500万円
配当金積立金   10万円
雑収入     500万円

9.払済保険への変更の経理処理

保険期間中に払済保険(いままで払ってきた保険料で作れるサイズの保険に減額して払込完了にする手続き)に変更した場合は、変更時の解約返戻金相当額と資産に計上してきた保険料との差額で、益金や損金を計上する。下記仕訳表は100万円差額が益金になった例。

借方貸方
保険積立金 300万円前払保険料  200万円
雑収入    100万円

外部リンク:国税庁HP,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。2022年1月試験 学科 問15

法人を契約者(=保険料負担者)とする生命保険に係る保険料の経理処理に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、いずれの保険契約も保険料は年払いかつ全期払いで、2021年10月に締結したものとする。

  1. 被保険者が役員および従業員全員、死亡保険金受取人が被保険者の遺族、満期保険金受取人が被保険者である養老保険の支払保険料は、その全額を資産に計上する。
  2. 被保険者が役員、死亡保険金受取人が法人である終身保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができる。
  3. 被保険者が役員、死亡保険金受取人が法人で、最高解約返戻率が60%である定期保険(保険期間20年、年払保険料100万円)の支払保険料は、保険期間の前半100分の40相当期間においては、その40%相当額を限度に損金の額に算入することができる。
  4. 被保険者が役員、給付金受取人が法人である解約返戻金のない医療保険の支払保険料は、損金の額に算入することができる。

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解答

助手のウィキ子

医療保険は完全掛捨てなんで、損金に入れられる訳なんですが、給付金受取人とかそれっぽいキーワードを入れて、なんかもらえそう感を出してきている迷彩問題です。ムカつくー。

法人の生命保険の税務