損益通算・繰越控除|FP2級Wiki

損益通算できる4つの所得種類を覚えて、その中の不動産所得と譲渡所得の損益通算できない例を理解しましょう。

1.損益通算

損益通算とは、不動産所得、事業所得、山林所得譲渡所得(ごく一部)の計算上生じた赤字の額を、
他の黒字の所得から差し引く(通算する)ことをいう。これら4つ以外の赤字は損益通算できない。
試験対策的には不・事・山・譲(ふじさんじょう)と覚えるのが定番ですが、
譲渡所得は通算できないものが多いので、実際の所得計算問題の際には充分注意しましょう。
ちなみに同じ所得の種類内で通算することは内部通算といいます。こちらも誤認なさりませんように。

1.不動産所得と譲渡所得の損失で損益通算できないもの

  1. 不動産所得の損失の金額のうち、土地等(建物はOK)取得の負債利子に係る部分
  2. 上場株式等の譲渡損失(申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等との損益通算は可)
  3. 一般株式等の譲渡損失
  4. 土地建物等の譲渡損失(一定の居住用財産はのぞく)
  5. 生活に通常必要でない動産に係る所得(ゴルフ会員権、金地金、別荘など)の計算上生じた損失
  6. 非課税所得の計算上生じた損失の金額(たとえば、生活用動産(自家用車等)の譲渡による損失など)
  7. 個人に対して時価の2分の1未満で譲渡した譲渡損失
       

2.損益通算の順序

損益通算は3段階で行っていきます。

一次通算

まず最初に一次通算をします。 一次通算は、経常所得グループと他グループとの二つに分かれています。

  • 経常所得グループ(利子・配当・不動産・事業・給与・雑)
  • 他グループ(譲渡・一時)

不動産所得または事業所得の損失は、経常所得のうち黒字の所得から差し引き、譲渡所得の損失は、一時所得(特別控除後で2分の1前)から差し引く。

二次通算

一次通算して残った損失は、他のグループの黒字から差し引いてひとまず総所得を出します。

経常所得グループ+他グループ=総所得

三次通算

それでも残った損失は、第三次通算をする。

総所得+山林&退職

       

2.損失の繰越控除・繰戻還付

1.純損失の繰越控除・繰戻還付

純損失の金額とは、損益通算の対象となる損失の金額のうち、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額をいう。

純損失の繰越控除

損益発生年が青色申告の場合には、純損失の全額を翌年以降3年間繰越控除することができる。この規定の適用を受けるためには、純損失発生年において青色申告書を提出し、その後は白色でも構わないので連続して確定申告書を提出することが必要。

純損失の繰戻還付

青色申告者は、その年に純損失の金額が生じた場合は、前年分も青色申告書を提出している場合に限り、損失申告書とともに還付請求書を提出することにより、前年分の所得税のうち一定の金額の還付を受けることができる。

2.雑損失の繰越控除

その年の所得金額から雑損控除の額を控除しきれない場合は、残った雑損失の金額を翌年以後3年間繰越控除することができる。

外部リンク:国税庁,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。2020年9月試験 学科 問33

所得税における損益通算に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 上場株式を譲渡したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、総合課税を選択した上場株式の配当所得の金額と損益通算することができない。
  2. 終身保険の解約返戻金を受け取ったことによる一時所得の金額の計算上生じた損失の金額は、給与所得の金額と損益通算することができない。
  3. 青色申告の承認を受けていない納税者の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の各種所得の金額と損益通算することができない。
  4. 別荘を譲渡したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の各種所得の金額と損益通算することができない。

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解答

Wiki技能士

不・事・山・譲(ふじさんじょう)の「事」です。青色でも白色でも他の所得と損益通算可能です。