不動産投資は専門的な用語が多くて躓くところです。このあとFP1級を目指す方にとっても難しいところになります。
同じE分野の2でも軽く触れていますが、まずは直接還元法を知ったうえで、
DCF法の理屈をしっかりと理解していってください。
1.直接還元法
その不動産でいくら稼げるかといったところから不動産価格を求める。
求める不動産の収益価格=一定期間の純収益÷還元利回り(期待収益率)
直接還元法は、DCF法に比べて簡便であるが、単純計算であるため精度は劣る。
2.DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法とは
将来その不動産で得られるキャッシュフロー(収入)を現在価値に割り引いて評価する方法。これは不動産に限らず企業評価などでも利用されます。
そもそも、なぜ現在価値に割り引いて評価するのか。ここを理解しないと話がまったく頭に入りません。
現在価値に割り引くとは、例えば10年後にもらえる10万円と、今すぐもらえる10万円。同じ価値ですか?というようなお話。
将来その不動産で得られるキャッシュフローはその時間経過分の価値を割り引かないといけませんよね? それを導き出すのがDCF法(NPV法やIRR法)ということです。
これについて詳しく書いてみたのが1級サイトにあります。読んでみてください。19.投資用不動産の評価方法
1.DCF法
対象の不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和と、保有期間満了時点における対象不動産の復帰価格の現在価値を合算して、不動産の収益価格を求める方法である。
※計算式については複雑な計算の部分は表で与えられます。
計算例
毎年100万円の純収益があるマンションの場合で、3年後に1,000万円で売却した場合、DCF法での収益価格はいくらか。複利原価率は6%とする。
[年6%の場合] | 1年 | 2年 | 3年 |
---|---|---|---|
複利原価率 | 0.943 | 0.890 | 0.840 |
(100万円×0.943)+(100万円×0.890)+(100万円×0.840)+(1,000万円×0.840)=1,107万円
実際のお金は100万円を3回もらえて、その後1,000万円で手放しているから1,300万円なのですが、手にするまでに3年の時を要してますので、実質価値はDCF法だと1,107万円だということですね。
タイムイズマネーということが良く分かります。
2.NPV法(正味現在価値法)
DCF法の派生形のひとつ。DCF法による収益価格から投資予定額(支払う金額)を差し引く。 割引率(内部収益率)が確定している状況で、投資予定金額が割高かお得かで判断する手法。 結果がゼロやプラスなら投資価値あり、マイナスなら投資価値なしということになる。割引率から決めたいときはこっちを使う。
- DCF法による収益価格>投資予定額←投資価値アリ
- DCF法による収益価格<投資予定額←投資価値なし
3.IRR法(内部収益率法)
DCF法の派生形のひとつ。DCF法による収益価格が、投資予定額と同じになる割引率(内部収益率)を求める。投資予定金額が確定している状況で、その金額で投資して導き出す割引率が高いか低いかにより判断する手法。結果がゼロやプラスなら投資価値アリ。マイナスなら投資価値なしということになる。投資予定金額から決めたいときはこっちを使う。
- 内部収益率>期待収益率(希望する収益)←投資価値アリ
- 内部収益率<期待収益率(希望する収益)←投資価値
3.借入金併用型投資
1.レバレッジ効果
レバレッジ効果とはテコの原理のこと。
不動産投資では自己資金と借入金を併用して収益性を高めることです。
例えば1,000万円の自己資金で年間収益100万円の投資用不動産を購入するよりも、1,000万円を頭金にして、購入価格3,000万円の年間収益300万円の物件を購入したほうが、利回りが同じく10%だったとしても、元手1,000万円で得られる収益は跳ね上がります。より積極的な不動産投資の考え方です。
2.DSCR(借入金償還余裕率)
借入金返済の安全度を測る尺度。
数値が大きくなるほど借入金返済に余裕があり、1より小さい場合は、毎期の純収益で借入金を返済できないことになる。
金融機関が融資をする際に使用する。例えば200万円のキャッシュフローに対して、元金+利息で100万円を返済をした場合はDSCRは2.0倍ということになる。数値が大きいほど返済の余裕がある。
DSCR=年間純収益(賃貸収入-運営費用)÷年間借入金元利返済額(元金+利息)
4.不動産の利回り
不動産投資の採算性を評価するための尺度として次のような各種の利回りが用いられる。
総収入利回り(単純利回り)
年間賃料総収入÷総投資額×100
純収入利回り(NOI利回り)
(年間賃料総収入-諸経費)÷総投資額×100
諸経費を計算に含めることで実際の利回りに近い。基本となる収益率。
5.不動産投資信託(J-REIT)
投資家として投資信託で不動産投資することもできます。
ETFと性格が似ているため投資信託のページで比較紹介しています。C分野09.投資信託へリンク
外部リンク:㈳不動産協会,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2020年1月試験 学科 問50
不動産の投資判断の手法等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- IRR法(内部収益率法)による投資判断においては、内部収益率が対象不動産に対する投資家の期待収益率を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。
- 収益還元法のうち直接還元法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して対象不動産の収益価格を求める手法である。
- NPV法(正味現在価値法)による投資判断においては、投資額の現在価値の合計額が対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。
- NOI利回り(純利回り)は、対象不動産から得られる年間の総収入を総投資額で除して算出される利回りである。
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解答
1
内部収益が上回っていれば投資価値アリという事です。 2は現在価値に割り引いちゃってるんでDCF法になっちゃってますね。 3は投資額が上回っちゃってるんで損しちゃいます。 4は単純利回りの説明になってます。 これは、難問です!!