公的医療保険|FP2級Wiki

ここでは健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度について学びます。
年齢や立場で加入する保険が変わります。その違いを全体で掴みつつ細かい条件を覚えていきましょう。

       

1.公的医療保険の全体像

この国は国民皆保険なので基本的にはいずれかの制度に加入する義務があります(生活保護とか除く)。
民間の事業所に勤めている従業員とその家族(被扶養者)は健康保険に、
自営業者やその家族などは国民健康保険
75歳以上後期高齢者医療制度に加入する。

2.健康保険

健康保険は従業員とその家族の業務外での疾病、負傷、出産、死亡などについて保険給付を行う制度。
被保険者が業務上や通勤途上で起きたことについては健康保険ではなく労災保険から給付される。

1.被保険者

民間の事業所に勤めている従業員は当然加入者となりますが、
以下の条件をすべて満たす短時間労働者も加入者扱いとなる場合があります。

  • 従業員50人超の企業の短時間労働者(労使合意があれば50人以下も対象)。
  • 週20時間以上で勤務期間2ヵ月超の見込み
  • 給与月額8万8000円以上

2.被扶養者

被保険者に生計を維持してもらうことで被扶養者になり保険料負担がいらなくなります。主な条件は下記のとおり。

  • 同居する3親等以内。別居ならば配偶者、子、孫、兄弟姉妹、直系尊属(父母、祖父母曾祖父母)までの範囲
  • 収入の条件(同居):130万円(60歳以上や障害者は180万円)未満で、被保険者の年収の2分の1未満
  • 収入の条件(別居):130万円(60歳以上や障害者は180万円)未満で、仕送りより少ないこと

3.健康保険の種類と保険者

種類保険者(運営側)
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)全国健康保険協会
(都道府県支部が運営)
組合管掌健康保険(組合健保)健康保険組合
       

4.保険料

保険料は、標準報酬月額と標準賞与額に対し、設定された保険料率を乗じて計算する。総報酬制という。
支払については被保険者と事業主の双方で負担する。

  • 協会けんぽ:都道府県別に保険料率が設定されて、必ず労使折半(会社と割り勘)
  • 組合健保:各組合が規約で定める保険料率で、負担割合は必ず事業主が2分の1以上となっている。

事業主が申し出れば産前産後休業期間中・育児休業期間中の健康保険料は、被保険者分・事業主分ともに免除される。

5.健康保険の主な保険給付

療養の給付

病気やケガをすると一部負担金のみで治療が受けられる。

  • 義務教育就学前:2割
  • 小学生以上70歳未満:3割
  • 70歳以上75歳未満:2割(現役並所得者は3割)

高額療養費

その月の一部負担金が自己負担限度額※を超えた場合に、高額療養費が支給される(後で返ってくる)。
事前に保険者から限度額適用認定証の交付を受けていれば、
自己負担限度額※を上回る金額の支払を最初から不要にできる(立替不要)。
食事代差額ベッド代は高額療養費の対象外

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※自己負担限度額は所得に応じて5区分に分けられている。
よくある中流家庭(標準報酬月額28~50万)の場合で、
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

傷病手当金

病気休業中の生活保障のために支給される継続的な給付。被扶養者や国保の人には無い。
3日間連続して働けない場合、休業4日目から支給される。
支給額は1日当たり直近12か月間の標準報酬月額を平均したあと30分の1して日割りにし、その3分の2相当の金額です。
支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月です。
(2022.1改正で通算になったので途中復職できた場合はその期間はカウントされなくて良くなった)

・給料が支給された場合に、傷病手当金よりも少ない場合は差額が支給される。
・在職老齢年金と傷病手当金は併給される。ただし、障害厚生年金があるときは原則支給されない
・傷病手当金の額が出産手当金より多ければその差額を支給

       

出産手当金

出産休業中の生活保障のために支給される継続的な給付。被扶養者や国保の人には無い。
支給対象となるのは、出産日(出産が遅れたら出産予定日)以前42日(多胎であれば出産日以前98日)から出産の翌日以後56日までの範囲に会社を休んだ健康保険加入者です。この期間内に会社を休んだ日数分が支給対象となります。

出産が遅れたら伸びた分も支給(出産が3日遅れたら計101日分) 支給額の算出方法は傷病手当金と同じです。

出産育児一時金・家族出産育児一時金

被保険者または被扶養者が出産すると50万円が一時金でもらえる。
産科医療補償制度に未加入の病院だと488,000円になる。
被扶養者の場合は「家族出産育児一時金」と呼ぶ。

埋葬料・埋葬費・家族埋葬料

埋葬料:被保険者が死亡したときに、埋葬を行った家族(被保険者に生計を維持されていた人であれば、被扶養者でなくてもかまいません。)に5万円が支給されます。

埋葬費:死亡した被保険者に家族がいないときは、埋葬を行った人に5万円までの範囲で、埋葬にかかった費用が支給されます。 また、被扶養者が亡くなったときは、被保険者に「家族埋葬料」として5万円が支給されます。

6.任意継続被保険者

退職後も2年間だけ健康保険を継続することができます。条件は下記のとおり。

  • 資格喪失の前日までに被保険者期間が2か月以上あったか
  • 資格喪失日から20日以内に申請する

保険料は全額自己負担に変わり、退職時の報酬月額をもとに都道府県ごとの料率を掛けて算出しますが、標準報酬月額は30万円が上限となります。
家族を被扶養者にすることも可能です。傷病手当金と出産手当金がありません。

Point:国保は全額自己負担で、傷病手当金と出産手当金が無いので、似ている性格のものになっていますね。

       

3.国民健康保険

職場の健康保険や後期高齢者、生活保護、どれにも当てはまらない世帯は、国民健康保険に加入しなければならない。

  • 被保険者の資格取得の届出は、取得日から14日以内に行うこと。
  • 国民健康保険は加入者全員が被保険者となり、被扶養者の概念はない。

1.保険者(運営側)

国民健康保険の保険者(運営側)は市区町村と業種別に組織された国民健康保険組合がある。一部、事務組合や広域連合がある。

2.保険料

保険料は前年の所得や家族構成から算出され、その料率は市区町村や組合によって異なります。ただし、最高限度は決まっています。

3.国民健康保険の保険給付

健康保険(協会けんぽ等)とは異なり、業務上かどうかに関わらず給付を行う。
負担割合や高額療養費、出産育児一時金などは健康保険と同条件
傷病手当金および出産手当金は任意給付(基本的に出ないがコロナの人は条件付きで出た)。

4.後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度の加入対象者は75歳以上の者、もしくは一定の障害をもつ65歳以上の者です。
被扶養者の制度はないので世帯ではなく、対象の国民が個人単位で加入することになります。
運営するのは各都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合で、保険料徴収するのは市区町村となります。

保険料保険料率は都道府県ごとに設定
納付方法年額18万以上の者は公的年金から天引き(特別徴収といいます)、口座振替や納付書も可(普通徴収)
自己負担割合一般所得者1割 一定以上所得のある方2割※ 現役並み所得者3割
※自己負担2割の方への配慮措置としてR7.9末までは、外来医療の自己負担増加分が月3,000円を超えた場合は払い戻されます。

外部リンク:厚生労働省,スタディング FP講座

       

公的医療保険に関する過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問3

公的医療保険に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 健康保険の適用事業所に常時使用される75歳未満の者は、原則として、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)または組合管掌健康保険に加入することになる。
  2. 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の介護保険料率は、都道府県ごとに定められており、都道府県によって保険料率が異なる。
  3. 健康保険の任意継続被保険者となるためには、健康保険の被保険者資格を喪失した日の前日まで継続して6ヵ月以上の被保険者期間がなければならない。
  4. 個人事業主や農林漁業者などが被保険者となる国民健康保険は、国が保険者として運営している。

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解答

Wiki技能士

公的医療保険の問題です。
問いかけ方が巧みで迷わせてくるのですが、
言っていることは働いている75歳未満の人は保険証は何ですか?ってだけの問題なんです。
75歳になると強制的に後期高齢者だから別として、あ、すると2号かって解るんです。
字面だけで半分暗記みたいに覚えてしまっている人はハズしてしまう問題です。
社会保険関係は頭の中でイメージしながら学習しましょう。

公的医療保険