贈与について学びます。そもそも贈与契約とは。というところから。
直系尊属からの贈与3種類は贈与の項目では難関です。
ボリュームも多い項目ですので、しっかり学習していきましょう!!
贈与税の申告書の提出期限は2月1日からです!!
(確定申告は2月16日からなのでそれより少し早い)
1.贈与契約とは
贈与者と受贈者、お互いの合意があると贈与契約となる。
贈与契約は書面でも口頭でも成立してしまう。ただし片方からの一方的意思表示だけでは認めない。
贈与契約は贈与者・受贈者間の合意だけで効力が生じる諾成契約(ダクセイケイヤク)である。
諾成契約というのは書面によらないため、贈与の時期はお互いに合意があった日ということになる。
贈与の取り消しについては書面があるなら取り消しは効かず、口頭の場合は履行が終わる前なら取り消しができる。
夫婦間で締結した贈与契約は婚姻中、第三者の権利を害さなければいつでも一方から取り消しができる。
2.贈与の種類
贈与には単純贈与(通常の贈与)の他に次の表の3種類が存在する。
定期贈与
定期贈与とは名の通り定期的な贈与(例:毎年100万円送る)。
定期贈与はどちらかが死亡したらそれ以後の効力は失う。
定期贈与は継続的な贈与なので、1年間の受贈額で贈与税を計算するのではなく、
定期的にもらう権利全体に対して贈与税が掛かってくる。
負担付贈与
負担付贈与は、贈与すると同時に一定の債務を負担させる契約。
受贈者が負担を履行しなければ贈与者は契約解除できる。
差し引いた差額のみが贈与税の課税対象になる。
贈与財産の価額は原則相続税評価額。ただし、上場株式や土地建物等の場合は通常の取引価額となる。
贈与資産と債務となる資産の因果関係はなくとも良い。
(例えば土地とその土地の借金でなきゃダメとかではない)
死因贈与
死因贈与は贈与者の死亡で発動する一種の始期付きの贈与。
遺言による遺贈に近い感じがするが、遺言は死者の一方的な意思表示であるのに対して、
死因贈与はお互いの合意によって成立するところが違う。
ただ、法律上の扱いに似ている部分もあり贈与税ではなく相続税の課税対象になる。
3.贈与税の対象となる贈与
贈与税は、原則として個人から贈与を受けた個人に対して課される。
- 個人から個人=贈与税
- 法人から個人=所得税(一時所得・給与所得)
- 個人・法人から法人=法人税
4.贈与税の納税義務者
贈与税の納税義務者は、原則として贈与により財産を取得した個人なのだが、その者の住所地、国籍などで異なってくる。
ちなみに、下表は相続人や受遺者に対しても同様となる。
納税義務者の範囲
次表用の目印 | 名称 | 内容 |
☆ | 居住無制限納税義務者 | すべての財産に課税 |
★ | 非居住無制限納税義務者 | すべての財産に課税 |
〇 | 居住制限納税義務者 | 国内財産のみ課税 |
● | 非居住制限納税義務者 | 国内財産のみ課税 |
受贈者・相続人・受遺者→ もらう側→ ↓贈与者・被相続人↓ ↓あげる側↓ | 国内住所あり | 国内住所あり (一時居住者) | 国内住所なし 日本国籍あり 10年以内に国内住所あり | 国内住所なし 日本国籍あり 10年以内に国内住所なし | 国内住所なし 日本国籍なし |
国内住所あり | ☆ | ☆ | ★ | ★ | ★ |
国内住所あり 一時居住贈与者 一時居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
国内住所なし 10年以内に国内住所あり | ☆ | ☆ | ★ | ★ | ★(注 |
国内住所なし 10年以内に国内住所あり ・非居住贈与者 ・非居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
国内住所なし 10年以内に国内住所なし ・非居住贈与者 ・非居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
なお、人格のない社団や、公益法人なども個人とみなして納税義務者となる場合もある。
5.贈与税の課税財産
贈与財産には通常の贈与財産とみなし贈与財産がある。
みなし贈与とは、一見贈与に見えないんだけど「あれ?これってよく考えたら贈与じゃね?」って行為で渡された財産のことです。
1.本来の贈与財産
贈与税が課される財産は、贈与によって取得した金銭に見積もることができる経済的価値のある財産全てとなる。
2.みなし贈与財産
贈与税が課される財産は、本来の贈与財産以外にも、贈与財産としてみなす、みなし贈与財産がある。
①保険金(保険料負担者じゃないものが保険金を受け取る場合)
契約者が親、受取人がこどもの満期保険金や、
契約者が親、被保険者がこども、死亡受取人が孫の死亡保険金は、
積み立てた者と受け取る者が別人なのでみなし贈与ということになります。
②定期金に関する権利
掛金を負担しないで定期金を受け取る場合、掛金を負担した者から定期金の給付を受ける権利を贈与されたものとみなされる。
③低額譲渡
適正な時価と比べて著しく低い価額で財産の譲渡が行われた場合は贈与とみなされる。時価との差額が課税対象になる。
- 上場株式・土地建物等:通常取引価額と譲渡価額の差額が課税対象
- 上記以外の場合:相続税評価額と譲渡価額の差額が課税対象
知り合いから車を譲ってもらったり、土地の名義変更なんかも対象になるので本人たちがうっかり気がつかない事も多いそうです。
④債務免除(借金をチャラにしてもらったり、親が肩代わりした場合)
借金を帳消しにしてもらうことも利益となりますし、親に肩代わりしてもらった場合も実質贈与といっしょという考え方です。
ただし、資力喪失等で弁済困難が明らかな場合はみなし贈与税は免除となる場合があります。
6.贈与税の非課税財産
贈与税にならない非課税財産や、別な税が課税される贈与がある。
- 法人から受けた贈与は一時所得となり所得税の対象。
- 相続や遺贈で財産をもらった者がその年に受けた贈与(相続税になる)
- 夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者からもらう日常的な範囲の生活費や教育費
- 社交的に必要な贈与(ご祝儀、香典など)
- 離婚時の財産分与請求権に基づく分与財産(適正額まで)
7.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
自己の居住用の家屋や家屋のための土地の取得や増改築などの資金を、直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。 一定金額まで非課税となります。
非課税限度額
契約締結期間 | 省エネ・耐震住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2022年1月~2026年12月 | 1,000万円 | 500万円 |
適用対象の住宅等
・対象となる住宅の床面積の制限(以下の表)
受贈者の合計所得金額 | 対象となる住宅の床面積 |
---|---|
1000~2000万円 | 50㎡~240㎡ |
1000万円以下 | 40㎡~240㎡ |
- 中古住宅は耐震基準を満たすもの
- 床面積の2分の1以上が居住用であること
- 増改築等は工事費用が100万円以上(居住用部分の工事費が1/2以上になること)
受贈者の要件
- 贈与を受けた年の1月1日に成人していること
- 贈与を受けた年の合計所得が2,000万以下
- 直系尊属である父母・祖父母・曾祖父母からの贈与であること(配偶者の親等はダメ)
その他ルール
- 資金の贈与を受けた翌年3月15日までに住まないといけない
- 資金の贈与を受けた翌年2月1日~3月15日までに所轄税務署に申告書提出
- 身内から購入する土地家屋はこの制度の対象にならない
- 贈与3年以内に贈与者が死んじゃっても課税価格に算入しなくていい
- 受贈者が先に死んじゃった場合、相続するものが10か月以内に申告書を出せば適用できる
8.直系尊属から教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
受贈者の教育資金に充てるための資金を直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。
受贈者の条件
- 贈与契約開始時点で30歳未満(教育訓練とか受講してると最大40歳まで継続)
- 前年所得が1,000万円以下
受けた贈与金額の利用は教育関係資金に限られます。
非課税限度額 | 1500万円(学校等以外の教育費は内500万円が限度) |
---|
教育資金の定義
- 学校等に支払われる入学金やその他の金銭
- 学校等以外のもの:塾や習い事など(23歳を超えると一部を除き認められなくなる)
契約の終了
以下の場合に契約が終了します
- 受贈者が30歳になった
- 受贈者が死亡した
- 残高がゼロになって合意により終了
使い残しがある場合は契約終了の年の贈与税に加算される(受贈者死亡の場合は加算されない)
贈与者死亡の場合
2019.4.1~2021.3.31に設定されたものは贈与後3年以内の贈与者の死亡に限り、2021.4以後は死亡時期問わず、原則、残額が課税される。
ただし、以下の場合はすべて相続税の課税対象になりません。
- 受贈者がまだ23歳未満
- 受贈者がまだ学校に通っている
- 受贈者が教育訓練を受けている
注)しかし、2023年4月1日以後に支払われる教育資金で、贈与者の死亡に係る課税価格の合計額が5億円を超える場合には上記に該当する場合であってもその残額を相続財産に加算する。
相続税の2割加算の対象について
主に1親等の血族や配偶者以外の相続人に加算される相続税の2割加算についてですが、
2021.4以後契約については2割加算の対象になります。それ以前の契約については2割加算はされません。
9.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
受贈者の結婚子育て資金に充てるための資金を直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。
受贈者の条件
- 贈与契約開始時点で成人以上50歳未満
- 前年所得が1,000万以下
受けた贈与金額の利用は結婚子育て資金に限られます。
非課税限度額 | 1,000万円(結婚費用は内300万円) |
---|
結婚&子育て資金の定義
- 結婚:婚礼費用や一定の転居費用
- 子育て:妊娠・出産・子の医療費や保育料など
契約の終了
以下の場合に契約が終了します
- 受贈者が50歳になった
- 受贈者が死亡した
- 残高がゼロになって合意により終了
使い残しがある場合は契約終了の年の贈与税に加算される(受贈者死亡の場合は加算されない)
贈与者死亡の場合
贈与者が死亡した場合の使い残しについての相続税の加算は特別な式をもって計算し、課税価格に加算します。
また、相続税2割加算対象者で、2021.4以後契約の人は2割加算の対象となりますが、それ以前の人は2割加算対象外です。
10.土地の利用に関する権利
税法上、土地の利用に関する権利の形態である使用貸借と賃貸借を厳格に区別している。不動産の相続で必要な知識です。
使用貸借
無償で土地を貸す契約であり、使用貸借権の価額(価値)はゼロとされる。土地の使用貸借契約があっても借り手に対して贈与税の課税関係は生じない。
賃貸借
賃貸借は当事者間で有償で物を貸し借りする契約類型。また賃貸契約には権利金という概念があり、権利金の授受が慣行となっている地域では支払うことで借地権や借家権を得る。権利金の授受を行わない場合は借地人に贈与税が課税されることとなる。
外部リンク:国税庁,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2022年1月試験 学科 問54
贈与税の計算に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 暦年課税に係る贈与税額の計算上、適用される税率は、超過累進税率である。
- 子が同一年中に父と母のそれぞれから贈与を受けた場合、同年分の子の暦年課税に係る贈与税額の計算上、課税価格から控除する基礎控除額は、各贈与者につき最高110万円となる。
- 妻が夫から受けた贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがある場合、その後、同一の夫から贈与を受けても、再び贈与税の配偶者控除の適用を受けることはできない。
- 相続時精算課税制度に係る贈与税額の計算上、適用される税率は、一律20%である。
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解答
2
贈与税での110万円の考え方はあげる人単位ではなく、受ける人単位です。
なのでこの場合は合計110万円ですね。