相続対策|FP2級Wiki

非上場株式の相続対策です。ここでは中小企業の社長にもしもがあった時の相続事業承継について学びます。
この場合、企業評価はできるだけ低くして税額を抑え、手続きはスムーズに、納税のための資金はしっかり確保して進めていきたいものです。
そのあたりを意識して読み進めましょう。

相続対策として中小企業が重視すべきものは、株価引下げ対策、納税資金対策、円滑な事業承継となります。

       

1.株価引下げ対策

株価対策は、自社株の評価を引き下げることで後継者への引き継ぎコストを抑え、引継ぎを円滑に行うためである。いくつか方法がある。

1.類似業種比準価額の引下げ

類似業種比準価額の3要素に着目して評価引き下げを狙う。

①1株当たり年配当金を下げる

直近の配当金の額を抑えたり、特別配当記念配当を利用する(1株当たり年配当に含まれずに配れる)。

②1株当たりの年利益金を下げる

損金計上を多くできれば当然利益を減少できる。実際の支出を伴わない方法として引当金減価償却費の計上がある。

③1株当たりの簿価純資産価額を下げる

社外に資産を流出させる方法として役員退職金の支給がある。

2.純資産価額の引下げ

会社の資産を減らしたり、有利に計算できる資産に代えるなどして対応する。

  • 時価評価よりも相続税評価の低い資産の購入(不動産の購入や貸付、ゴルフ会員権など)
  • 高収益部門の分離や役員退職金の支給

3.会社規模の調整

原則的評価方式を行う場合、会社の規模によって併用方式による類似業種比準方式と純資産価額方式の割合を決めるLが異なってくる。会社規模を大きくすることで評価が高くなりやすい純資産価額方式の割合を下げられるので、会社規模を調整して評価引き下げを狙う。

       

2.相続税の納税資金対策

1.生命保険の活用

保険料負担者と保険金受取人法人、被保険者を経営者等とする保険を使い、経営者の退職金等の原資として活用する。

2.法人による自己株式の取得

相続人から会社が自己株式を買い取り(金庫株という)、その資金で納税する。

3.非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予制度

これらは承継計画を都道府県に提出し、認定を受ける必要があります(4の個人事業者についても)。

1.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例)

会社の後継者(経営承継受贈者)が、特例認定会社の代表者だった者から、
会社の非上場株式の贈与を受けた場合に、その非上場株式等の贈与に係る贈与税全額を原則事業継続を要件に、
その贈与者の死亡まで納税猶予する。

この特例は推定相続人でなくても相続時精算課税制度の適用を受けることができる。

その後、贈与者が死亡した場合には猶予された贈与税額は免除となり、相続した者として相続税に移る
この場合、一定の要件を満たせば後述の相続税の納税猶予制度(特例)を適用することができる。

2.非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度(特例)

会社の後継者(経営承継相続人)が、相続または遺贈により認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その非上場株式等に係る課税価格の全額に対応する相続税について、原則事業継続等一定の場合は後継者の死亡日まで納税猶予される。

この特例は小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例と併用できる。

       

4.個人事業者の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度

1.個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度

個人事業主のスムーズな事業承継のための制度。個人商店は株はないですから、特定事業用資産※の贈与について納税猶予してくれます。制度を利用するには、承継計画を都道府県に提出し、認定を受ける必要があります。認定受贈者が成人している事、担保が必要など条件があるが、担保はそのまま事業用資産で問題はない。原則、事業継続が要件です。

この特例は推定相続人でなくても相続時精算課税制度適用を受けることができる。

その後、贈与者が死亡した場合には猶予された贈与税額は免除となり、贈与時の時価で相続した者として相続税に移る。
この場合、一定の要件を満たせば後述の相続税の納税猶予制度(特例)を適用することができる。
特定事業用資産とは:被相続人の事業(不動産貸付事業等は除く)に供された土地(400㎡)と建物(床800㎡)及び建物以外で貸借対照表に計上される減価償却資産(機械、車両、生物など)のこと

2.個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度

認定相続人が、相続または遺贈により特定事業用資産を取得した場合には、その資産に係る課税価格の全額に対応する相続税について、事業を継続する等一定の場合は、後継者の死亡日まで納税猶予される。

6.中小企業における円滑な事業承継

  • 経営者の相続が発生してからでは対策が限られるため、早急に対策を立て長期的に計画していくことが必要になる。
  • 後継者を早期に決定し、社内で充分な経験を積ませるなど人材育成に努める必要がある。
  • 自社株式を後継者へ集中させる方法を検討し、株式が分散するのを防止する必要がある。
  • 相続開始時に遺産分割で親族が争わないよう、遺言や除外合意・固定合意などで対策しておく必要がある。

外部リンク:国税庁,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問60

相続税の納税資金対策および事業承継対策に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受ける場合、相続時精算課税制度の適用を受けることはできない。
  2. オーナー経営者への役員退職金の支給は、自社株式の評価額を引き下げる効果が期待できることに加え、相続時における納税資金の確保にもつながる。
  3. オーナー経営者の死亡により遺族へ支払う死亡退職金は、死亡後3年以内に支給額が確定した場合、相続税において退職手当金等の非課税限度額の適用を受けることができる。
  4. 納付すべき相続税額について、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には物納が認められているが、物納に充てることができる財産の種類には申請順位があり、第1順位には国債、地方債、不動産、上場株式などが挙げられる。

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解答

助手のウィキ子

どんぴしゃで当ページに載っている問題です。相続時精算課税制度が使えます!
相続対策もまた難関(。-`ω-)
頭痛がするけど落ち着いてじっくり勉強していこうね♪