遺族給付|FP2級Wiki
遺族基礎年金(1階部分)と遺族厚生年金(2階部分)を受給することができる遺族の条件を覚え、
遺族厚生年金の計算ができるようになりましょう。
1.遺族基礎年金
1.受給要件
死亡した者の要件
次のいずれかに該当する者が死亡すること。
- 国民年金の被保険者
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の者で日本国内に住所がある
- 老齢基礎年金の受給権者のうち保険料納付済期間(保険料免除期間と合算対象期間も)が25年以上の者
- 保険料納付済期間(保険料免除期間と合算対象期間も)が25年以上の者
保険料納付要件
上記の1と2の者が死亡した場合は次の保険料納付要件が必要となってくる。
- 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの間の被保険者期間のうちに、納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。
- 上記の納付要件を満たしていなくても令和8年4月1日前にある場合で、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと
2.支給対象者
死んだ人に生計を維持されていた、子のある配偶者または子に支給される。
子の条件
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子(高校三年生)
- 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
3.遺族基礎年金の額
遺族基礎年金の年金額=老齢基礎年金の満額+子の加算
子の加算
令和6年度の加算額です。
- 1~2人目の子:1人につき234,800円
- 3人目の子以降:1人につき78,300円
4.権利消滅
配偶者&子の共通の要件
- 受給権者が死亡したとき
- 受給権者が婚姻したとき
- 直系血族、または直系姻族以外の者の養子となったとき
配偶者のみにある要件
- 子のある配偶者でなくなったとき
子のみにある要件
- 離縁によって、死亡した被保険者、または被保険者であった者の子でなくなったとき
- 健常者、障害者の子がそれぞれ年齢に達した時(支給要件の欄参照)
2.寡婦年金・死亡一時金
国民年金の1号被保険者期間保有者が年金支給を受けずに死亡した場合に、
一定の要件を満たせば寡婦年金or死亡一時金がもらえる。
このふたつは併給されず選択適用となる。
寡婦年金
支給の要件・注意点
- 第1号被保険者期間が免除期間等と合算して10年以上あること
- 亡くなった夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがあるときは支給されない(R4年改正があるかも)
- 妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けているときは支給されない
支給対象者
婚姻期間10年以上の妻
支給期間
妻が60歳~65歳に達するまで
支給額
夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額
死亡一時金
支給の要件・注意点
- 第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方
- 死亡した者が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがあると支給されない
- 遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されない
- 死亡日の翌日から2年までに請求しないと権利消滅する
支給対象者
その方によって生計を同じくしていた遺族に支給
支給期間
一時金で支給される。
3.遺族厚生年金
支給要件
遺族厚生年金には短期要件と長期要件があり、それにより計算が変わってきます。
簡単に言うと短期要件とは、加入中に死んじゃった人。長期要件とは脱退後に死んじゃった人で対象の人。
短期要件
- 被保険者の死亡
- 被保険者だった者が、被保険者期間中の傷病が原因で初診の日から5年以内に死んじゃったとき。(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡者について、死亡前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が国民年金加入期間の3分の2以上あること※)
- 1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死んじゃった時
※経過措置:令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料納付期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられる。
長期要件
- 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上の者の死亡
- 老齢厚生年金の受給権者(納付済み期間、合算対象・免除期間合計が25年以上の者のみ)の死亡
支給対象者
対象となる遺族は、死亡者に生計を維持されていた以下の者で、順位が決められている。先順位の者が受給する場合はそっちが優先。
- 配偶者(夫は55歳以上が条件)
- 子(18歳到達年度の年度末を経過していない者(高校三年生)、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者※)
- 55歳以上の父母
- 孫(※上記に同じ高校三年生、または上記に同じ障害者)
- 55歳以上の祖父母
※子のない30歳未満の妻は、5年間の有期。
※子のある配偶者、子(※上記に同じ高校三年生、または上記に同じ障害者)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。
※夫、父母、祖父母の支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も併給できる。
遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の年金額=老齢厚生年金の報酬比例部分の額×4分の3
※短期要件で300月未満の人の年金額=報酬比例部分の額×(300月÷被保険者月数の合計)×4分の3
権利消滅
「子のある妻」が再婚した場合は、妻の受給権は消滅するが、子に移行する。
妻&子の共通の要件
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(内縁関係を含む)
- 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき
妻のみの要件
- 夫が亡くなったときに30歳未満の「子のない妻」が、遺族厚生年金を受け取る権利を得てから5年を経過したとき
- 受給していた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利がなくなり、その権利がなくなってから5年を経過したとき
子のみの要件
- 亡くなった方と離縁したとき
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金が加算されない「子のない妻」の遺族厚生年金不足を補うもの。
妻が自身の年金を受け取ることになる65歳に達するまで加算が継続する。
- 夫の死亡時、妻が40歳以上で子がいない場合
- 夫の死亡時に子がいたが、子が18歳到達年度を過ぎ、妻が40歳以上の場合
※中高齢寡婦加算は遺族厚生年金に加算される
遺族基礎年金が受け取れる間は、中高齢寡婦加算は支給停止される。
経過的寡婦加算
経過的寡婦加算は寡婦(未亡人)の救済制度ですが、経過的というだけあって、 この制度はいずれ無くなる制度です。
- 1956年4月1日以前生で65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した妻
- 中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生の遺族厚生年金の受給権者(妻)が65歳に達した
経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合計し、中高齢寡婦加算と同額になる額。
4.公的年金の併給
原則としては支給事由が異なる年金は1つしか選択できないというのがあるが、以下のような場合は併給がある。
※ただし、老齢基礎年金+障害厚生年金の組み合わせは原則通り併給できない
老齢基礎年金、老齢厚生年金&遺族厚生年金
族厚生年金を受給できる人が65歳になり、自身の老齢厚生年金も受給できるようになったときに、次の3通りの組み合わせがある。
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 老齢基礎年金+遺族厚生年金
- 老齢基礎年金+(老齢厚生年金×2分の1)+(遺族厚生年金×2分の3)
1番が優先支給となるが、2番3番よりも額が少ないときは、2番3番の多いほうとの差額が遺族厚生年金として支給される。
障害基礎年金と厚生年金保険
障害基礎年金受給者(障害基礎+障害厚生の人も含む)は65歳からは以下の併給が可能になる
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+遺族厚生年金
労災保険との併給
同一事由で、労働者災害補償保険の障害補償年金と障害基礎年金および障害厚生年金が支給される場合は、障害基礎年金および障害厚生年金が全額支給され、障害補償年金が減額調整される。
- 障害基礎年金(全額)+障害厚生年金(全額)+障害補償年金(減額)
5.公的年金と税金
公的年金のうち、老齢給付は雑所得、障害給付と遺族給付は非課税になる。
外部リンク:日本年金機構,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問7
公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 遺族基礎年金を受給することができる遺族は、国民年金の被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、その者によって生計を維持し、かつ、所定の要件を満たす「子のある配偶者」または「子」に限られる。
- 厚生年金保険の被保険者が死亡したことにより支給される遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の厚生年金保険の被保険者期間の月数が300月未満の場合は、300月とみなして計算する。
- 厚生年金保険の被保険者が死亡したことにより遺族厚生年金の受給権者となった子が、直系血族である祖父の養子となった場合、当該子の遺族厚生年金の受給権は消滅する。
- 国民年金の第1号被保険者が死亡し、その遺族である妻が寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合、その妻はどちらか一方を選択して受給する。
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解答
3
養子になる場合でも直系血族や直系姻族の養子であれば消滅しません♪