損害保険の税務(個人事業主・法人)|FP2級Wiki

損害保険の税務では個人事業主と法人との違い、なにが必要経費になるか、経理処理を学習しましょう。

1.保険料の経理処理

個人事業主および法人が契約した損害保険契約の経理処理は、
保険料のうち積立保険料に該当する部分は資産計上
掛捨保険料部分損金算入(個人事業主なら必要経費)として取り扱う。
(被保険者・受取人を従業員全員とする傷害保険等の掛捨保険料部分は福利厚生費として損金算入または必要経費となる)
保険料を一括で支払った場合でもその年ごとに分けて損金計上する。

個人事業主自己または生計を一にする親族のために契約する場合は個人契約と同じ扱いになる(必要経費にはならない)。
自宅兼事務所などの場合は事務所分のみ経費として認められる。

       

2.保険金の経理処理

保険金を受け取る場合、
個人事業主保険種類により法人または個人の税務に準ずるが、
法人保険種類に関わらず同様の経理処理を行う。
法人所有の建物や車両など、固定資産の損害に対する保険金を受け取り、一定期間内に代替資産を取得する場合、
法人には圧縮記帳が認められている。

圧縮記帳

法人が保険金により代替資産を取得するか当該資産の改良をした場合、代替資産等の取得価額を減少させる(帳簿価額の圧縮)ことで、減少させた分を損金算入し保険差益の課税価格を縮小させる経理処理のこと。
取得価額の減少は、次期以降の代替資産の減価償却費の減少を伴うため、課税所得の上昇要因となる。

つまり結果的に圧縮記帳はあくまでも課税を翌年以降に繰り延べているだけで、免除される訳ではない。
また、個人事業主には適用できない。

1.傷害保険

1.保険金受取人が契約者(個人事業主・法人)の場合

個人事業主
傷害保険金・死亡保険金事業所得の収入に算入益金算入

受け取った保険金をもとに従業員に災害見舞金または遺族に死亡退職金を支払う場合、その額は損金または必要経費となる。

2.保険金受取人が被保険者(役員・従業員)の場合

個人事業主法人
傷害保険金・死亡保険金経理処理なし経理処理なし

個人が受け取る災害見舞金は非課税で、遺族が受け取る死亡保険金は、死亡した従業員が保険料を負担していたとみなして、相続税の対象となる。

       

2.火災保険

個人事業主法人
建物非課税
・損失は保険金控除後の金額が必要経費
益金算入
・損失は損金算入
圧縮記帳が可能
棚卸資産事業所得の収入に算入
・損失は必要経費
益金算入
・損失は損金算入
・圧縮記帳は不可
休業損失事業所得の収入に算入益金算入

3.自動車保険

個人事業主法人
車両保険非課税(全損の場合)
・損失は保険金控除後の金額が必要経費
修繕する場合
修繕費は必要経費とし、保険金を事業所得の収入とする
益金算入
・修繕費は損金算入
・全損の場合は圧縮記帳が可能
対人・対物賠償保険
無保険車傷害保険
非課税経理処理なし
搭乗者傷害保険
自損事故保険
人身傷害補償保険
傷害保険と同じ傷害保険と同じ

4.満期保険金・解約返戻金

個人事業主法人
一時所得益金算入

外部リンク:国税庁HP,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。2019年9月試験 学科 問18

契約者(=保険料負担者)を法人とする損害保険契約の経理処理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. すべての従業員を被保険者とする普通傷害保険を契約する場合、保険料は全額を損金の額に算入する。
  2. 積立火災保険の満期返戻金を法人が受け取った場合、受け取った全額を益金の額に算入し、それまで資産計上していた積立保険料の累計額を損金の額に算入する。
  3. 法人が所有する自動車で従業員が業務中に起こした対人事故により、その相手方に保険会社から自動車保険の対人賠償保険金が直接支払われた場合、法人は当該保険金に関して経理処理しなければならない。
  4. 法人が所有する建物が火災で焼失し、受け取った火災保険の保険金で同一事業年度に代替の建物を取得した場合、所定の要件に基づき圧縮記帳が認められる。

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解答

Wiki技能士

直接相手方に支払われてますから経理処理不要ですね。