ここでのポイントは協議分割、代償分割、それと新しく登場した配偶者居住権です。
FP試験では新しいものは出題されやすいので押さえておきましょう。
1.遺産分割の方法
遺産分割とは、一度相続人全員で受け取る(共有財産)ことになる相続財産を各相続人に具体的に配分していくこと。
分割方法は以下の4種類。
指定分割
- 遺言の指定により分割する方法。
- 遺産の一部だけに行うことも可能。
- 原則、協議分割、調停・審判分割よりも優先される。
協議分割
- 相続人全員で話し合い、全員の同意により分割する方法。
- 法定代理人とその子が共同相続人である場合は、家裁で子の特別代理人を選任する。
- 協議成立後、全員の署名押印により遺産分割協議書を作成する。
- 遺産分割協議書作成後でも相続人全員の合意があれば再分割協議ができる。
- 一部のみの遺産でも全員が合意すれば協議分割できる。
- 遺言で禁じられた場合を除き遺言に従わないこともできる。
遺産分割協議書
協議分割時に遺産分割協議書を作成する。特に形式はないが、相続人全員の署名捺印が必要。 不動産の相続登記を行う場合は協議書に各相続人は実印を捺印して印鑑証明書を添付する必要がある。 協議書の内容については遺産全てに限らず、遺産の一部についてのみ作成することもできる。 また、相続人全員が合意により解除して改めて遺産分割協議を行うことができる。
調停分割
協議分割で話がまとまらない場合、家庭裁判所において調停委員に間に入ってもらい解決を目指す手続。第二段階的な。
審判分割
調停分割でも話がまとまらない場合、家庭裁判所が審判分割します。第三段階的な。 ただ、必ずこの段階を踏む必要はないので、いきなり審判分割を申し出ることもできる。 相続人全員の合意が無い限り、法定相続分に反することはできない。
2.財産分割の方法
現物分割
遺産そのものを現物で分ける方法。きっちり分けることは難しいので一部を売却するなどしてその代金で調整したり、 自己資金で調整(代償分割)する必要もある。
換価分割
相続財産の全部または一部を売却し、金銭に換えて分割する方法。現物分割では難しい各相続人の法定相続分を、きっちり分割できる。処分費用や譲渡取得税などを考慮する必要がある。
代償分割
自分の相続分を越えて遺産を取得した者が、その代償として自己の固有財産を他の相続人に支払う方法。 土地や会社など分割が難しい財産の時に有効な方法。
代償分割と税金
代償分割により取得した資産は相続税の対象となる。渡すものが現金ではなく土地や家屋のような譲渡所得の対象となる資産であるときには時価で譲渡したとして交付した者に譲渡所得税が課される。そのため実務では代償分割は金銭が多いようです。
3.遺産分割前の預貯金の払い戻し制度(仮払い制度)
相続法改正で、葬儀代等の考慮のために遺産分割前に預貯金債券の一部を仮払いできるようになった。 相続人が金融機関から仮払いできる金額は、「預貯金残高×法定相続分×3分の1」で、ひとつの金融機関から引き出せるのは150万円まで。
4.配偶者居住権
被相続人の配偶者が相続発生時に居住していた建物を配偶者自身が亡くなるまで無償で使用できる権利。希望があれば存続期間を設定することもできます。財産分与で揉めた場合には配偶者は住まいを奪われずに済むなど配偶者保護に役立つ。 配偶者居住権は相続財産として相続税の対象になる。権利を譲渡することはできず、配偶者が死亡した時点で消滅する。
5.配偶者短期居住権
被相続人の配偶者が相続発生時に居住していた建物を一定期間無償(最低6ヶ月)で使用することを配偶者に認める権利。 財産評価額はゼロ扱いで、登記することはできない。
外部リンク:国税庁,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2019年5月試験 学科 問54
遺産分割に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 被相続人は、遺言によって、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
- 遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して行うものとされている。
- 遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
- 適法に成立した遺産分割協議については、共同相続人全員の合意があったとしても、当該協議の解除は認められない。
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解答
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テキスト本文にある通り、全員の合意があれば再協議できます。