相続税の基礎知識|FP2級Wiki
相続税の非課税や債務控除などの負担減の制度について学習します。
相続税の対象になるものとならないものの区別がしっかりとできるようにしましょう。
1.相続税の納税義務者
相続税は、渡す側と受け取る側それぞれ、国内か国外かで条件が変わってきます。
FP試験の基礎編でたまに出題されるのですがなかなか覚えにくく苦労します。
受贈者・相続人の側が日本国籍があり、10年以内に国内に住所があれば、相手が誰でもすべての財産が課税されます。覚えておきましょう。
下表については贈与の項目からの再登場ですね。贈与と同じなので再確認しておきましょう。死因贈与、遺贈も同様です。
次表用の目印 | 名称 | 内容 |
☆ | 居住無制限納税義務者 | すべての財産に課税 |
★ | 非居住無制限納税義務者 | すべての財産に課税 |
〇 | 居住制限納税義務者 | 国内財産のみ課税 |
● | 非居住制限納税義務者 | 国内財産のみ課税 |
受贈者・相続人・受遺者→ もらう側→ ↓贈与者・被相続人↓ ↓あげる側↓ | 国内住所あり | 国内住所あり (一時居住者) | 国内住所なし 日本国籍あり 10年以内に国内住所あり | 国内住所なし 日本国籍あり 10年以内に国内住所なし | 国内住所なし 日本国籍なし |
国内住所あり | ☆ | ☆ | ★ | ★ | ★ |
国内住所あり 一時居住贈与者 一時居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
国内住所なし 10年以内に国内住所あり | ☆ | ☆ | ★ | ★ | ★(注 |
国内住所なし 10年以内に国内住所あり ・非居住贈与者 ・非居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
国内住所なし 10年以内に国内住所なし ・非居住贈与者 ・非居住被相続人 | ☆ | 〇 | ★ | ● | ● |
2.相続税の課税財産
相続税の計算上、課税財産は2つに分けられます。
1.本来の相続財産
金銭的な価値のあるプラスの財産もマイナスの財産も含めた相続人に引き継がれることになるすべての財産。
- 被相続人が相続開始時に有していた事業用の売掛金や貸付金等の債権は、相続税の課税対象となる。
- 被相続人が自動車事故で死亡し、加害者が加入していた自動車保険で相続人が受け取った対人賠償保険金は、相続税の課税対象とならない。
2.みなし相続財産
みなし相続財産とは、民法上(遺産分割上)は相続財産にカウントしないが、税法上(相続税の総額の計算上)は相続財産としてカウントする財産の事。有名なものとしては生命保険は受取人固有の財産として民法上カウントしないよってヤツ。そのため相続放棄した者も受け取ることができる。
- 生命保険金等(死亡保険金):契約者および被保険者が被相続人である生命保険契約
- 退職手当金等(死亡退職金):被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの
3.生前贈与加算
相続税の計算上、たとえ生前に贈与していても加算されるものがあります。
1.相続開始前3年以内の贈与
法定相続人である者や、推定相続人以外でも遺言等による遺贈で財産を取得した者は、
相続発生前3年以内に受けた贈与がある場合には贈与時の評価額で相続税の課税価格に算入する。
法定相続人でも相続や遺贈によって財産を取得しなかった場合には、
死亡日前3年以内に贈与を受けていたとしても生前贈与加算の対象にならない。
贈与税の配偶者控除を受けたもので、控除の範囲内の金額も対象外。
注意:R6.1以降の贈与分から7年以内が対象になります。また、延長した4年部分は総額100万円まで相続財産に加算しない。
2.相続時精算課税制度による贈与財産
相続時精算課税制度を受けた財産は3年以内とか関係なく相続財産に算入する。評価は贈与時の価額。
3.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置による贈与財産
贈与者が死亡した場合、その時点の残額は相続税の対象になる。
4.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置による贈与財産
2019.4.1~2021.3.31に設定されたものは贈与後3年以内の死亡の場合に、2021.4以降は死亡時期問わず、相続開始時の残額を加算。
(受贈者が23歳未満、学校に在学中、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中の場合を除く)
4.相続税の非課税財産
相続税の課税対象にならない資産がある。
1.死亡保険金の非課税
「保険料負担者および被保険者が被相続人である保険契約」の死亡保険金を相続人が受け取った場合、次の金額が非課税となる。
死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
法定相続人の数
死亡保険金の非課税限度額を計算する法定相続人の数は、相続放棄をした者がいても、放棄はなかったものとして考える。
しかし、相続放棄をした者自身はたとえ保険金をもらったとしても非課税枠を利用することはできない。
養子について
- 普通養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に含めることができる。
- 特別養子、代襲相続人である普通養子は実子として扱う。
死亡保険金受取人が複数いる場合
被相続人死亡による死亡保険金を受け取る者が複数いる場合、次の算式で各人の非課税額を割り振る。
非課税限度額×(その相続人の受取保険金÷全相続人が受けた保険金の総合計)=各人の非課税金額
2.死亡退職手当金等の非課税
死亡後3年以内に確定された死亡退職手当金等を相続人が受け取ると、非課税枠が利用できる。
500万円 × 法定相続人の数 = 退職手当金等の非課税限度額
3.弔慰金の非課税
死亡により相続人やその他の者が受ける弔慰金や花輪代、葬祭料等について以下の金額までが非課税になる。
- 被相続人の死亡が業務上であるとき:賞与を除いた給料の3年分を控除
- 被相続人の死亡が業務上でないとき:賞与を除いた給料の半年分を控除
4.その他の主な非課税財産
- 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物。ただし、投資対象や商品として所有しているものは除く。
- 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益法人に寄附したもの、あるいは特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
5.債務控除
被相続人が残した消極財産(負の遺産)は、相続財産から控除することができる。葬式費用の一部は債務ではないけど控除できる。
1.債務
控除できるもの
- 銀行借入金
- 不動産の未払金
- 未払医療費
- 未払税金(被相続人原因の延滞税も含む)
- 未払いの生活費など
控除できないもの
- 墓碑や仏壇などの未払金
- 保証債務(主たる債務者が弁済不能に限り控除可)
- 相続財産の管理費用
- 遺言執行費用、財産目録調製費用
- 遺産分割交渉に係る弁護士費用や訴訟費用
- 相続税申告のための税理士費用
- 相続人を確定するための戸籍謄本代など
2.葬式費用
控除できるもの
- 葬式、埋葬、火葬、納骨の回送に要した費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(お通夜など)
- 葬式に当たりお寺への戒名料や読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
控除できないもの
- 香典返しのためにかかった費用
- 墓石や墓地の買入れの費用や墓地を借りるための費用
- 初七日や法事などのためにかかった費用
- 死体の解剖に要した費用等
外部リンク:国税庁,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2019年9月試験 学科 問56
相続税の非課税財産に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 被相続人の死亡によって被相続人に支給されるべきであった死亡退職金で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものを相続人が取得した場合は、死亡退職金の非課税金額の規定の適用を受けることができる。
- 被相続人の死亡によって相続人に支給される弔慰金は、被相続人の死亡が業務上の死亡である場合、被相続人の死亡当時における普通給与の5年分に相当する金額まで相続税の課税対象とならない。
- 相続の放棄をした者が受け取った死亡保険金については、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができない。
- 死亡保険金の非課税金額の規定による非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」の算式により計算した金額である。
.
.
.
解答
2
相続税の課税対象に3年分ですね。