不動産所得・事業所得・雑所得|FP2級Wiki
不動産所得と事業所得の境目が難しいのでしっかり区分できるようにしましょう。事業所得では減価償却について学びましょう。
1.不動産所得
不動産所得とは、土地や建物等の貸付、地上権・永小作権等の不動産の上に存する権利等の貸付による所得をいう。 たとえ不動産の貸付を事業的規模(いわゆる5棟10室基準※)で行っていようが、それは事業的だから事業所得だねとはならず、不動産所得となる。 ※5棟10室基準とは、貸家なら5棟、アパートなら10室以上の規模のこと
不動産所得かどうか迷うケースでの判断は以下のとおり。
不動産の貸付に係る所得の分類 | 所得区分 |
---|---|
食事の提供を伴う不動産の貸付(下宿など) | 事業的規模→事業所得 事業的規模に満たない→雑所得 |
土地の貸付の際に貸借人から受け取った権利金 | 土地時価の1/2超→譲渡所得 土地時価の1/2以下→不動産所得 |
時間貸駐車場、自転車置き場で 自己の責任で他人のものを保管する場合 | 事業的規模→事業所得 事業的規模に満たない→雑所得 |
月極駐車場など、保管責任を負わない場合 | 不動産所得 |
自社使用人に利用させる寮・社宅 | 事業所得 |
不動産所得の金額
不動産所得金額=総収入金額-必要経費
総収入金額に算入されるもの
- 家賃・地代・駐車場収入・権利金・礼金・更新料など
- 敷金、保証金は収入とならないが返還を要しないことが確定した部分は収入金額に計上する。
必要経費に算入されるもの
- 租税公課(固定資産税、不動産取得税、登録免許税等)※¹
- 火災保険料、修繕費、減価償却費※²、管理費、広告宣伝費、専従者給与、借入金利子、仲介手数料、交際費など
※¹租税公課のうち所得税、住民税は必要経費に算入されない。
※²新たに取得する賃貸用建物や建物付属設備・構築物の減価償却費は定額法(毎年均等)で計算する。
2.事業所得
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から生ずる所得のほか、医師、弁護士、芸能人などの自由業による所得をいう。事業所得になる事業かどうかは、対価を得て継続的に行っているかにより判断する。 先述しましたが、一般的には事業と考えられるものでも、不動産貸付業の所得に限っては不動産所得となる。 また、事業用資産の譲渡による所得は事業所得ではなく譲渡所得となる。
事業所得の金額
譲渡所得金額=総収入金額-必要経費
総収入金額に算入されるもの
事業所得の総収入金額は、売上代金などでその年に収入すべき金額のこと(未収分も含む)。 取引先への貸付金の利子などの事業遂行に付随した収入も含まれる。
必要経費に算入されるもの
事業所得の必要経費は、事業所得のために生じた費用で、償却費等の特定の物をのぞきその年に債務の確定したもの。 売上原価、販売費や一般管理費なども含まれる。
売上原価
売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は、特に届出をしない場合は、最終仕入原価法が法定評価方法とされる。
売上原価=年初棚卸資産の棚卸高+その年の仕入高(また製造原価)-年末棚卸資産の棚卸高
減価償却費
建物や機械装置等の有形減価償却資産(鉱業用をのぞく)に対する方法には、定額法と定率法がある。 定額法または定率法を選択できるものについては、いずれかを選定して税務署長に届け出ることとされている。 償却方法を選定して届け出なかった場合は、定額法により計算することになる(法定償却)。 ただし、1998.4.1以後に取得した建物や2016.4.1以後に取得した建物付属設備および構築物については、定額法のみが適用される。
- 定額法:毎年同額の減価償却費を計上する方法
- 定率法:当初を多く計上し、年々減価償却費が減少する方法。
取得価額が少額な減価償却資産について
取得資産 | 償却の時期 | |
---|---|---|
少額の減価償却資産 | 取得価額10万円未満 または使用可能期間1年未満 | 事業の用に供した年に全額を 必要経費とする |
青色申告者(少額減価償却資産) | 取得価額30万円未満※ | 事業の用に供した年に全額を 必要経費とすることができる |
一括償却資産 | 取得価額20万円未満 (上記2項目に該当するものをのぞく) | 事業の用に供した年から 支出額を3年間で均等償却 することができる。 |
一定の親族に対して支払う家賃など
所得税では、原則として事業主と生計を一にする親族に支払う給料、家賃、借入金の利子などは必要経費に算入することができない。
事業主との関係 | 事業主側 | 親族側 |
---|---|---|
生計を一にする場合 | ・親族に支払った利子、家賃などは、必要経費にならない ・親族の支払った固定資産税などは、事業主の必要経費になる | ・受け取った利子、家賃などは、所得にならない(原則として課税されない) |
生計を一にしない場合 | ・親族に支払った利子、家賃などは、必要経費になる | ・受け取った利子、家賃などは、所得になる(課税される) |
3.雑所得
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、9種類ある所得のいずれにも当てはまらない、仲間外れの所得をいう。なのでネーミングも雑所得なんですね。 雑所得をさらに分類すると、公的年金等の雑所得、業務、その他の雑所得の3つにわけることができる。
1.公的年金等の雑所得とその他の雑所得の例
- 公的年金等の雑所得:企業年金等の年金、老齢による公的年金など
- 業務:副業収入のうち継続的な営利目的のもの
- その他の雑所得:個人年金、外貨預金の為替利益、友人への貸付利子など
2.雑所得の金額
雑所得の金額は、公的年金等の雑所得だけ分けて計算します。
雑所得の金額=(公的年金等収入額-公的年金等控除額)+(公的年金等以外の総収入額-必要経費)
公的年金等控除額
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合の公的年金等控除額は以下のとおり。
受給者年齢 | 公的年金等の収入金額 | 公的年金控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 130万~410万円未満 410万~770万円未満 770万~1,000万円未満 1,000万円以上 | 60万円 収入×25%+275,000円 収入×15%+685,000円 収入×5%+1,455,000円 1,955,000円(上限) |
65歳以上 | 330万円未満 330万~410万円未満 410万~770万円未満 770万~1,000万円未満 1,000万円以上 | 110万円 収入×25%+275,000円 収入×15%+685,000円 収入×5%+1,455,000円 1,955,000円(上限) |
外部リンク:国税庁,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。2019年9月試験 学科 問33
所得税の各種所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 定年退職時に退職手当として一時金を受け取ったことによる所得は、退職所得となる。
- 個人事業主が事業資金で購入した株式の配当金を受け取ったことによる所得は、配当所得となる。
- 個人事業主が事業の用に供していた営業用車両を売却したことによる所得は、譲渡所得となる。
- 事業的規模で不動産の貸付けを行い、賃貸料を受け取ったことによる所得は、事業所得となる。
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解答
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これは定番とも言える問題です。
不動産の貸付は不動産の所得なのか事業の所得なのか。
人はなぜ人を愛するのか。永遠のテーマです。